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顔面神経

1. 顔面神経麻痺後の病的共同運動の予防と治療

ベル麻痺やハント症候群などの末梢性顔面神経麻痺により高度の神経障害をきたした症例には、顔面神経麻痺の回復過程において後遺症が生じてくる。病的共同運動は、口を動かした時に閉眼が起こるなどの不随意で異常な顔面運動であり、後遺症のうち最も高頻度で最も不快な症状である。顔面神経麻痺後の病的共同運動は、再生してきた顔面神経の過誤支配、すなわち、もともと支配していた表情筋と違う表情筋に顔面神経が迷入して発症する。そのため、病的共同運動は一度発症すると、治癒させることが不可能とされてきた。我々は、顔面神経麻痺後の病的共同運動の予防法と治療法を開発した。

A. 病的共同運動の予防法の開発

後遺症として病的共同運動が高頻度に発症すると予想される完全脱神経をきたした末梢性顔面神経麻痺患者に、ミラーバイオフィードバック療法による予防を行わせた。具体的には、顔面運動の回復の兆しが認められた時より、鏡を見ながら瞼裂の狭少をきたさないように口運動を行うリハビリテーションを開始し、10か月以上継続させた。その結果、リハビリテーションを行った患者では、行わなかった患者と比べて口運動時の瞼裂比が有意に大きく、ミラーバイオフィードバック療法により病的共同運動が予防できることを明らかにした。

B. 病的共同運動の治療法の開発

顔面神経麻痺後に発症した病的共同運動は、一度発症すると治癒させることが不可能とされてきた。我々は、ボツリヌス毒素を1回だけ投与し、一時的に病的共同運動を軽快させた後、病的共同運動が再発しないようにミラーバイオフィードバック療法を行うと、ボツリヌス毒素の効果が消失した後であっても、口運動時の瞼裂比の有意な改善が認められ、ボツリヌス毒素・バイオフィードバック療法により病的共同運動を治療できることを明らかにした。

病的共同運動が再生した顔面神経の過誤支配により発症し、ボツリヌス毒素は末梢の神経筋接合部のみに作用することから、ボツリヌス毒素・ミラーバイオフィードバック療法が中枢神経系の可塑的変化(cortical reorganaization)を引き起こしている可能性が考えられる。

2. ハント症候群のめまいと難聴

めまいを伴うハント症候群のうち、高度CPが残存する症例のめまいは代償されにくかった。この結果は、前庭神経炎の長期予後(日耳鼻98: 951-958, 1995)と類似していたが、内耳前庭障害が中心であるめまいを伴う突発性難聴のめまいが代償されやすいこととは異なっていた。以上の結果から、ハント症候群のめまいは前庭神経障害と考えられた。めまいを伴うハント症候群に内耳道造影MRIを行ったところ、上前庭神経のみが造影され、下前庭神経はほとんど造影されなかった。この結果は、再活性化したVZVが顔面神経と上前庭神経との間の吻合(facio-vestibular anastmosis)を介して上前庭神経に感染して、めまいが発症すると考えられた。この吻合は、前庭遠心性線維であり、我々がその起始核やAchとCGRPの共存を同定した神経系である(Brain Research 566: 103-107, 1991)。

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