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頭頸部腫瘍

1. 頭頸部癌の治療成績の向上

1998年から2002年までに当科で加療を行った喉頭癌未治療例72例を対象に、2006年まで経過を観察した。声門癌47例(男性44名、女性3名)、声門上癌22例(男性)、声門下癌3例(男性)で、平均年齢は69.1歳であった。喉頭癌全体の5年生存率は72.4%であり、部位別の生存率は声門癌88.2%、声門上癌45.9%であった。Stage別では、StageTが89.4%、StageUが78.7%、StageVが60.0%、StageWが30.8%であった。1989年から1997年までの当科の治療成績と比較して、StageUの治療法を放射線治療に少量シスプラチンを併用することに統一したことにより、5年生存率が、65.7%から78.7%と著明に改善した。

2. 頭蓋底手術

鼻副鼻腔癌に対する当科の基本的な治療法は、まず上顎洞試験開洞を行い、放射線照射に選択的動注化学療法(シスプラチン)を併用する。残存腫瘍に対しては、眼球を温存した上顎亜全摘を追加する。頭蓋底進展をきた症例には、鼻側切開と頭皮冠状切開とを組合せ前頭蓋底手術を行う。脳外科による開頭操作と頭蓋内腫瘍の切除、耳鼻咽喉科による経顔面操作による鼻副鼻腔腫瘍摘出、形成外科による頭蓋底および顔面の再建により手術を行っている。

一方、鼻副鼻腔の良性腫瘍に対しては顔面に切開を加えない鼻内視鏡手術併用前頭蓋底手術を行っている。悪性腫瘍の場合、篩板を中心とした病変で眼窩内脂肪織や皮膚に浸潤がない場合を適応としている。側頭下窩病変に対しては、側頭開頭に頬骨操作を加えた中頭蓋底手術を行っている。

3. FDG-PETによる頭頸部癌の診断

徳島大学にPET/CTが導入される前の平成14年より、香川医大のPETを利用した頭頸部癌の診断を開始した。PETが、原発不明癌頚部リンパ節転移例の原発巣診断、1cm前後のリンパ節への転移の診断、放射線化学療法後の治療効果の判定、局所再発の診断、遠隔転移の診断に有用であることを報告した。また、一側性の反回神経麻痺症例では、健側喉頭にFDGが集積することがあり、注意が必要であることを報告した。

4. 副咽頭間隙腫瘍摘出術とFirst bite syndrome合併症

副咽頭間隙腫瘍には、自覚症状に乏しい、手術の難易度が高い、病変到達までに正常組織が犠牲になるなどの問題点がある。耳下腺深葉からの多形腺腫が半数を占める。当科では、経頸部・耳下腺法で摘出術を行っている。術前のMRIで、腫瘍と頭蓋底との間に5mmのスペースがあれば、下顎離断は回避できると考えている。

First Bite Syndromeは、食事の最初の咀嚼時に耳下腺部に鋭い疼痛が生じるもので、副咽頭間隙腫瘍摘出術の合併症の1つである。耳下腺深葉腫瘍摘出術と経頸部法による副咽頭間隙腫瘍摘出術を比較することにより、手術操作における外頸動脈周囲の剥離操作がFBSの発症に関係すると考えられた。すなわち、外頸動脈周囲の剥離操作により耳下腺を支配する交感神経が障害され、同時に耳下線が残存している場合にのみFirst Bite Syndromeが発症する。過去の文献では、交感神経切断後に耳下線が副交感神経に対して過敏になるためにFirst Bite Syndromeが発症すると記載されているが、根拠に欠ける。動物実験の報告から考察すると、交感神経が切断された耳下線から最初に分泌される粘稠な唾液が、一時的な唾仙痛を引き起こしていると考えられた。

5. 形状記憶型撓性咽喉頭内視鏡の開発

咽喉頭の手術用の形状記憶型撓性咽喉頭内視鏡を開発した。本内視鏡の新規性は、第1に術者が1人で内視鏡の鉗子操作(右手)と患者の舌引き操作(左手)ができること、局所所見がワイヤレスのモニターで観察でき、同時に記録できることである。第2に内視鏡のプローブが硬性と軟性の中間の硬さであり、手術注に最適の形状に変形させ、操作中はその形状を維持できることである。第3にCCDカメラと鉗子の相対的な位置を最適に設定でき、さらにその位置で鉗子の先の方向が自由に設定できることである。内臓バッテリによる高輝度LEDライトを光源とするため、光源ケーブルが不要であり、防水加工されたカメラ部は金属筒とともに消毒できる。全体の形状はピストル型でバランスが取れ、片手操作に適している。

本内視鏡で咽喉頭を観察し、咽頭異物摘出術、咽喉頭の良性腫瘍の切除、悪性腫瘍の生検を行うことができた。しかし、声帯ポリープの切除は成功しなかった。さらなる改良が必要であるが、外来における低侵襲手術に適した手術機器となる可能性がある。

6. PEG(経皮内視鏡的瘻造設術)の導入による化学放射線療法の完遂率の向上

頭頸部癌に対して化学放射線療法(CRT)を行なった患者に対し、有害事象のため嚥下困難や摂食障害が出現し食事摂取量が約1/3著明に減少した症例にPEGの造設を勧めた。PEGを造設した症例とPEGを拒否した症例を比較し、CRTの中断率と栄養状態の比較検討を行った。その結果、PEG必要・造設群ではCRTを中断した症例はなかったが、PEG必要・拒否群では、28例中12例、42.9%でCRTを一時中断した。PEG必要・拒否群では有意な血中総蛋白値の低下を認めた。CRTにおけるPEG造設は、CRTの中断を防いで治療効果を向上させると考えられる。

7. Mohs' pasteを用いた頭頸部癌の緩和治療

手術不能の下咽頭癌の頸部リンパ節転移と上顎癌に対してMohs軟膏によるchemosurgeryを行った。突出した癌の表面を固定し、滲出液、悪臭、出血をコントロールし、腫瘍を平坦化することで末期癌患者のQOLを改善した。

8. 化学療法による舌の味覚受容体遺伝子発現抑制

頭頸部癌に対する化学放射線治療中に生じる味覚障害は、化学療法による舌のうま味および甘味受容体の共通サブユニットであるT1R3遺伝子発現の低下が関与していることを明らかにした。また、うまみ受容体のリガンドであるMSG(nonosodium glutamate)の食事への添加が、化学療法による舌のT1R3遺伝子発現低下を抑制し、味覚障害を改善するかについて検討している。

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