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鼻・アレルギー

1. TDI感作モデル動物の鼻粘膜におけるヒスタミンH1受容体のup-regulation

TDIにより感作、誘発を行う鼻過敏症モデル動物では、鼻粘膜に対する非特異的刺激により三叉神経の軸索反射を介して逆行性に遊離した神経ペプチドが、肥満細胞からヒスタミンを遊離させ、くしゃみ、水様性鼻漏などのアレルギー性鼻炎症状が発症する。TDIで感作したラットにTDIにより誘発を行い、鼻粘膜のH1受容体mRNA発現をリアルタイムPCRで定量すると、4時間後をピークにコントロールの約4倍に発現レベルが上昇していた。同時にTDIにより感作、誘発したラットの鼻粘膜のH1受容体蛋白発現をRadioligand receptor binding assayで定量すると、24時間後に約2倍に増加していた。すなわち、TDIにより感作、誘発したラットの鼻粘膜における、H1受容体のup-regulationを認めた。この鼻粘膜H1受容体up-regulationは、アレルギー性鼻炎における鼻粘膜の過敏性亢進の機序の1つである可能性が考えられる。

また、TDIにより誘発を行う前にdexamethasone を前投与しておくと、TDIにより誘発される鼻過敏症状は抑制され、同時に、鼻粘膜のH1受容体mRNA発現増加も抑制された。この結果は、アレルギー性鼻炎に対する鼻噴霧ステロイドは、鼻粘膜のH1受容体のup-regulationを抑制して鼻粘膜の過敏性亢進を抑制し、効果を発揮している可能性が示唆された。

TDIにより感作したラットに対し、H1受容体拮抗薬であるchlorpheniramineを前投与しておくと、TDIにより誘発される鼻過敏症状は抑制された。同時に、鼻粘膜のH1受容体mRNA発現増加も約1/2に抑制された。さらに、HeLa細胞を用いた研究により、H1受容体にヒスタミンが結合することにより、PKCを介してH1受容体がdown-regulationではなくup-regulationすることを明らかにした。鼻粘膜でも、遊離したヒスタミンが、H1受容体に結合し、H1受容体をup-regulationしている可能性が考えられた。

TDIにより感作したラットに対し、ロイコトリエン受容体拮抗薬であるpranlukastを前投与しておくと、TDIにより誘発される鼻過敏症状は抑制され、鼻粘膜のH1受容体mRNA発現増加も抑制された。次に、chlorpheniramineとpranlukastを共に前投与しておくと、TDIによる誘発で引き起こされる鼻粘膜のH1受容体mRNA発現増加がさらに抑制された。鼻粘膜におけるH1受容体をup-regulationには、ヒスタミンを介した機序とロイコトリエンを介した機序が存在していることを示唆された。

2. 初期療法の分子メカニズム

H1受容体拮抗薬を用いた花粉症に対する初期療法は臨床的に有効性が証明され、ガイドラインでも推奨されているが、 H1受容体拮抗薬の slow-onset effect のメカニズムは明らかでなかった。そこで、TDIにより感作を行う前および感作中のラットにH1受容体拮抗薬であるepinastineを連日投与することで、初期療法のシミュレーションを行った。その結果、TDIにより誘発される鼻過敏症状および鼻粘膜のH1受容体mRNA発現増加は、epinastineの単回投与で有意に抑制されたが、epinastineを1週間以上前から投与しておくとさらに抑制された。この結果から、初期療法は鼻粘膜のH1受容体のup-regulationを抑制して鼻粘膜の過敏性亢進を抑制し、効果を発揮している可能性が示唆された。

次に、ヒト鼻粘膜のH1受容体mRNAを低侵襲的に経時的に測定する方法を確立し、初期療法を行った花粉症患者と、行わなかった患者で鼻粘膜のH1受容体mRNAとくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉の症状を比較した。その結果、初期療法を行った患者の鼻粘膜のH1受容体mRNAは行わなかった患者と比べて有意に抑制され、アレルギー性鼻炎症状も抑制された。さらに、鼻粘膜のH1受容体mRNAとアレルギー性鼻炎症状との間には有意の相関を認めた。この結果から、初期療法は鼻粘膜のH1受容体のup-regulationを抑制してアレルギー性鼻炎症状を抑制していると考えられた。

3. TDI感作モデル動物の鼻粘膜におけるヒスタミン合成酵素に対するdexamethasoneの抑制効果

TDIで感作したラットにTDIで誘発を行い、アレルギー性鼻炎様症状を誘発したところ、鼻粘膜のヒスタミン含量、ヒスタミン合成酵素であるhistidine decarboxylase(HDC)活性およびそのmRNAが有意に上昇した。TDIにより誘発を行う前にdexamethasone を前投与しておくと、上記の変化は抑制された。この結果から、アレルギー性鼻炎に対する鼻噴霧ステロイドは、鼻粘膜のヒスタミン合成酵素の発現とその活性を抑制してアレルギー性鼻炎の治療に効果を発揮している可能性が示唆された。

4. スプラタストと小青竜湯のヒスタミン・シグナルの抑制を介した抗アレルギー作用

TDI感作モデル動物を用いて、スプラタストのアレルギー性鼻炎様症状、鼻粘膜におけるH1受容体、HDCおよびIL-4の遺伝子発現を検討した。TDIによりアレルギー性鼻炎様症状を誘発すると、鼻汁中のヒスタミン含量が上昇し、鼻粘膜におけるHDC活性、H1受容体、HDCおよびIL-4の遺伝子発現が増加した。2週間のスプラタストの投与は、TDI誘発によるアレルギー性鼻炎様症状、鼻汁中のヒスタミン含量が上昇、鼻粘膜におけるHDC活性、H1受容体、HDCおよびIL-4の遺伝子発現の上昇を有意に抑制した。IL-4の鼻腔投与は鼻粘膜のH1RmRNAをup-regulationさせ、ヒスタミンの鼻腔投与は鼻粘膜のIL-4 mRNAをup-regulationさせた。さらに、スプラタストはHaLa細胞のIL-4によるH1RmRNAをup-regulationを抑制したが、ヒスタミンによるH1RmRNAをup-regulationは抑制しなかった。以上の結果から、スプラタストはHDCやIL-4の遺伝子転写を抑制することでヒスタミンやIL-4によるH1Rの遺伝子発現を抑制し、抗アレルギー効果を示していると考えられた。

小青竜湯も、TDI感作モデル動物におけるTDI誘発によるアレルギー性鼻炎症状を抑制し、鼻粘膜のH1RとHDCの遺伝子発現の上昇を抑制した。さらに、TDIによるIL-4とIL-5のmRNAの上昇も抑制したが、IL-13mRNAの上昇は抑制しなかった。以上の結果から、小青竜湯もヒスタミン・シグナルを抑制して抗アレルギー作用を示していると考えられた。

5. 徳島県におけるスギ花粉とヒノキ科花粉の飛散

徳島県におけるヒノキ科花粉の飛散状況を、昭和56年より平成19年まで26年間にわたり測定した。徳島県における過去26年間のヒノキ科花粉の平均総飛散数はスギ花粉の平均総飛散数の約1/3であった。スギ花粉の総飛散数の多い年にはヒノキ科花粉の総飛散数も多い傾向にあったが、ヒノキ科花粉とスギ花粉の総飛散数の比率は年によりかなり異なっていた。また、昭和62年と平成18年は、スギ花粉の少量飛散年でありながらヒノキ科花粉の大量飛散年であった。スギ花粉の飛散予報だけでなく、ヒノキ科花粉の独自の飛散予報も必要であると考えられた。

スギ花粉の総飛散数は、前年7月の最高気温、平均気温、日照時間、湿度との間に有意の相関を認めたが、ヒノキ科花粉の総飛散数は前年7月の最高気温と平均気温との間に有意の相関を認めただけであった。ヒノキ科花粉の正確な飛散予報には、ヒノキ科花粉の総飛散数に影響するスギ花粉とは異なる気象因子の解明が必要と考えられた。

徳島県におけるヒノキ科花粉の飛散時期は3月下旬から4月下旬であり、スギ花粉の飛散時期より約1か月、遅かった。ヒノキ科花粉はスギ花粉と共通抗原性を持つため、ヒノキ科花粉がスギ花粉症患者のアレルギー性鼻炎症状の遷延化や再増悪の原因の一つとなっていると考えられた。

6. 術中透視X線を用いた内視鏡下副鼻腔手術

再手術例などナビゲーションが必要な内視鏡下副鼻腔手術において、代わりに術中透視X線を用い手術を工夫した。

7. 多胞性副鼻腔嚢胞の術前MRIの有用性

多胞性副鼻腔嚢胞に対する内視鏡下副鼻腔手術の術前MRIの有用性と限界について検討した。

8. ボリコナゾールの侵襲性アスペルギルスに対する有用性

従来の治療で効果に乏しい侵襲性アスペルギルスに対して、ボリコナゾールの有用性を示した。

9. LEDを用いた新しいアレルギー性鼻炎光フォト治療の開発

徳島大学耳鼻咽喉科では、ナローバンドUVB(狭帯域中波紫外線)を発光するLEDを用いたアレルギー性鼻炎に対する新規治療法を開発している。ナローバンドUVB療法は、308-313nmの狭帯域のUVBの光を蛍光管により全身の皮膚へ照射し、皮膚のアレルギー疾患を治療する光フォト治療である。我々は、日亜化学と共同で310nmのUVBを発光する小型LEDの開発に成功し、花粉症などのアレルギー性鼻炎を治療することを目的として研究を進めている。

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