• 徳島大学 大学院医歯薬学研究部
  • 徳島大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野

Department of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery, Tokushima University Graduate School of Biomedical Sciences

耳鼻咽喉科・頭頸部外科の病気

睡眠時無呼吸症候群

いびき(鼾)

いびきは、睡眠中に咽頭が狭くなり、空気が通るときのどが振動して音が鳴るものです。だいたい振動するのは上は口蓋垂から下は舌根部のあたりでおこります。この部分はもともと狭いうえに、周囲に骨による支えがないためつぶれやすく、息を吸ったときに吸い寄せられてさらに狭くなります。また、眠るとこの筋肉が緩み、より狭くなりやすくなります。そのため健康人では熟睡時にいびきをかきます。

肥満でのどの狭い人、アゴが小さい・ひっ込んでいる人、扁桃腺やアデノイドが大きい人、鼻づまりがある人などが鼾をかきやすいとされています。

寝ているときにのどがさらに狭くなり、息を吸うときに気道の壁が吸い寄せられて閉じてしまい、呼吸が止まってしまうが無呼吸で、それが頻繁に起こるものが睡眠時無呼吸症候群です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は7時間の睡眠中10秒以上つづく無呼吸(apnea index:AI)が30回以上みられるもの、睡眠1時間あたりの無呼吸数が5回以上のもの、睡眠1時間あたりの無呼吸(AI)または低呼吸数(apnea hypopnea index:AHI)が10回以上のものと定義されています。

また、睡眠時無呼吸症候群は閉塞性・中枢性・混合性に分けられます。

閉塞性無呼吸(OSAS)は脳のほうから息をするように指令が出て呼吸をはじめようとしても気動が閉塞して息ができない状態をいいます。閉塞する場所で鼻性・上咽頭性・中咽頭性・下咽頭性・喉頭性・気管性などに分けられます。一般的に言われている無呼吸症候群は閉塞性をさしており、中咽頭性と鼻性が多いといわれ、様々な治療が行われています。

中枢性無呼吸は脳からの呼吸をするための指令が出ないもので呼吸運動そのものが見られません。

混合性無呼吸は閉塞性と中枢性が混在して見られるもので、重度の無呼吸症では閉塞性と中枢性の混在が多少あることが多いです。

このような無呼吸があると十分に睡眠がとれず、日中の眠気、集中力、活力に欠ける、居眠りがちになる、居眠り運転で事故や重大事故などを起こしやすくなります。また、無呼吸のため酸欠状態になり、心臓や血管系に負担がかかり、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などになりやくなります。治療をせずに放置しておくと生命に危険が及ぶ場合るため、適正な症状分析と診断・治療・予防などの対策が必要になります。

無呼吸症候群(SAS)

AHI>40: nasal CPAPを主体として閉塞部位に対する手術の併用を考慮します。
AHI 20~40: 扁桃肥大などの気道閉塞が原因と考えられる場合は手術療法を考慮します。難治例ではnasal CPAPの導入も検討します。

睡眠ポリグラフ(ポリソムノグラフ)

睡眠ポリグラフは睡眠状態や睡眠段階、呼吸循環動態など種々の生理機能を総合的に測定する検査法です。ただ、病院に泊まる必要があり環境が自宅と異なることで影響を受ける可能性があります。

睡眠期を判定するために脳波、筋電図、眼球電図を同時に記録します。

簡易睡眠呼吸検出装置(アプノモニタ)

患者さんが簡単に装着・操作できるため自宅で実施できる簡易の睡眠呼吸モニタ装置です。パルスオキシメータで動脈の酸素濃度、気流、胸部と腹部の運動センサーを用いて睡眠呼吸障害を評価します。しかし睡眠に関連した生理的なデータは測定されず、他の睡眠に関連した異常は識別することができません。

経鼻的内視鏡検査

鼻より内視鏡を挿入し、上向きに寝たときののどの閉塞状態を確認します。当科では内視鏡で中咽頭腔の大きさと肥満度が睡眠時無呼吸の出現に関係していることを発表しており、内視鏡で簡便に睡眠時無呼吸の検査が出来ます。

睡眠時無呼吸症候群の治療

nasal-CPAP

睡眠時無呼吸症候群に用いる装置でマスクを鼻に装着して空気を鼻から送り込んでのどの内側から膨らませてつぶれないようにしていますみます。効果が高く睡眠時無呼吸症候群の治療として用いられています。

症状は比較的すぐに改善されるため、熟睡出来るようになります。また、この装置を使うことで循環系合併症の心拍数増加、高血圧、不整脈といった症状の抑制にも有効な方法でしょう。

ただ、寝苦しいなど不快感が出ることや、鼻が悪いと使えないことがあります。鼻の通りが悪い場合は手術にて鼻の通りを先に改善することが必要でしょう。

この装置は数十万円程度するため、いびきだけでは保険が適応されないため非常に高価なものです。しかし入院検査で中度~重度の無呼吸症と診断されれば保険の適応となり、毎月数千円で貸出することができるようになります。その場合は1~3カ月毎の通院が必要になります。

手術療法

空気の通り道が狭い場合手術療法も考えられます。狭くなっている場所が、鼻・上咽頭・中咽頭などによって有効な手術法も変わってきます。鼻の通りが悪い場合は鼻中隔矯正術や下鼻甲介切除術、レーザーによる鼻粘膜焼灼術などが上げられます。上咽頭が狭くなっている場合はアデノイド切除術を行います。中咽頭が狭くなっている場合は扁桃摘出術、口蓋垂・軟口蓋・咽頭形成術(UPPP)を行っています。

最近は子供の肥満が増加しており、いびきや無呼吸症の子供も増えていますが、一般的には子供のいびきの原因としてアデノイドや扁桃腺の肥大などが多いとされています。このような場合は手術療法で症状の改善が期待できます。子供のいびきは身体の発育に影響が出てくる可能性もあるため注意が必要です。

口蓋垂・軟口蓋・咽頭形成術(Uvulo-palato-pharyngo-plasty:UPPP)

咽頭が狭く、呼吸の邪魔になっている場合は咽頭腔を広くして呼吸がしやすい状態を形成します。UPPPは口蓋扁桃をとり、咽頭・口蓋垂を切除することで咽頭を広げます。ただ、全身麻酔が必要で入院していただく必要があります。この手術は重度の閉塞性無呼吸症候群に対して行っています。